チャンチキおけさ

 幼少の頃、周りの大人たちは飲んだくれが多かった。家でドンチャン騒ぎの中、夜がふけていったものだ。子供心にあんな大人にはなるまいと思った。

 一方・・もう7・8年前になろうか、某国建築家団体が南東北の建築視察に来た。総勢30数名。一国を代表する建築家達の来訪、くれぐれも失礼のないようにと緊張が走る。
そこで来訪者と同じ位の人数で接待することになり、小生も宴会接待係となる。

 当日・・・
一国を代表する建築家と聞いていたが、若人もおり、中にはブロンド美人もちらほら。その家族なのだろうか。これは役得と秘かに思う。

 宴会が始まる。ところが盛り上がらない。それは言葉の壁のせい、話が通じないのだ。さすが地方の建築家。小生を含め皆、英語が話せない。接待係の中で3・4人しか話せないのだ。
このままでは両国の交流が深まらない。JAPANの建築家は何をしてるのか!ということになりかねない。

 それを察したのか、はるばる海外から来た彼らは全員で合唱を披露。それも3曲もだ。わざわざこのために練習したはずもなし、準備もなしにそんなに歌えるのはすごい。僕らだったら「君が代」くらいしか全員で歌える曲なんてないだろう。しかも上手い、迫力がある。何の歌かは不明なのだが・・・。

 僕らに出来るのはカラオケくらいだ。

 僕は困った。JAPANのプライドにかけ何とかしなければならない・・・。

 同じ思いの建築家がいた。仙台のY氏。彼とは親しく話すのはその日が始めてだったが、同じ歳と言うこともあり親近感を感じていた。彼も同じく危機感を抱いていた。

 その時あろうことか、昔の大人たちのドンチャン騒ぎを思い出してしまった。そこで・・・
「チャンチキおけさなんてどうかな・・」と言ってみる。するとY氏も同意。二人で「チャンチキおけさ」のカラオケをすることになる。

 ただ歌うだけではあの合唱には勝てない。そう、大人たちが箸で皿やビンをたたいていたように、二人で皿と箸を両手に舞台に立つ。

      http://8.health-life.net/~susa26/natumero/31-35/tyantiki.html

 歌いながら・・ふと会場を見ると・・なんと、国を代表する建築家達が箸で皿やビン・コップをたたいているではないか。あのブロンド美人達も・・。会場は大盛り上がりになってしまう。
僕らは大和魂を感じてもらえたかと、安堵する。

 しかし少し心配になってくる。彼らが母国に帰国、その日本文化を多くの人に話し、国際問題にならないだろうか。僕は一向に酔えない状態となってしまったが、友好ムードの中終演できた。

 そして何を思ったかのか、次の年も彼らは訪れた。しかし僕らは宴会接待係から外された。