建築道(みち)32 ・・50年先も青年でいたい!

福島県住宅供給公社の高齢化対応型戸建住宅設計コンペが2位に終わってから、もんもんと1年半を過ごした。するとその悔しさを晴らすことが出来る千載一遇のチャンスが訪れる。初冬、建築士会福島支部主催設計コンペが開催された。

 

それは、

・・21世紀に向けて提言する・・建築士としての夢発見「私の住みたい家(老人同居)」

あなたの理想とする家を、そしてあなた自身の素敵な夢を自由に表現して下さい・・

という設計コンペで、

東と南道路298㎡の敷地に自由に夢を語れというものだった。

 

そこで・・・

 

◇「50年先も青年でいたい!」

「私達は朝陽のスコールと明るいザワメキの中、一日が始まる。陽の光が前向きに生きてゆくエネルギーになるのだ。

外での戦いに疲れ、オアシスに辿り着く。家族は大黒柱のもとへ集い会う。そして今日の出来事を話しながら、それぞれの趣味を持ち寄るだろう。そんな中子供たちは育ち、光の下で歴史は積み上げられる。

子供は陽に向かいて闊達に育ち、歳老いても青年の心を持ち、光の下で歴史は積み上げられる・・・。

朝陽に向かって飛び出しそうな、そんな前向きな人生を送りたい。そしてそんな家族でありたい。」

 

・・・との、難解なコンセプトで挑む。

すると・・・

 

◇審査員講評 審査委員長 深瀬啓智氏

最優秀となったこの作品は家族とは何か、家庭生活はどうあるべきか、かく在りたいという生きてゆく哲学と、そのコンセプトが的確に把握され、巧みに表現されている。家族と家庭でのみ可能な楽しく温かみのある、そして年老いても若々しく生きていきたい、そんな雰囲気のある優れた案である。

大黒柱のある吹き抜けのある明るい居間を中心とし、車庫・アプローチ・居間・食堂と緩いスロープで連続させながらその高低差を生かし、変化に富んだ豊かな空間構成となっている。特に多用しているスロープは車椅子のためではなく、豊かな空間構成の手だてとした巧みな手法で、結果として車椅子での生活でも楽しめる味わいのある案である。

高低差を利用したアプローチ、庭、テラス、居間、食堂から見え隠れする雰囲気も楽しげで、敷地の使い方、住宅と庭とのバランスもよい。

住宅の高低差を生かしたデザインもプレゼンテーションも丁寧で上手に表現されている。

 

・・・という身に余る素晴らしい講評を頂く。

1995年建築士会福島支部設計コンペ 最優秀作品