直筆サインCDの土産

2枚目は直筆サインのCD
 
ドゥオモで旅の仲間と放れ、一人で街を歩き回る。

高級文房具店でウィンドウショッピングし、お祭り騒ぎの共和国広場を横目にロッジアを通り、オルサンミケレ教会に行き懺悔をする。その後シニョーリア広場に入るとヴェッキオ宮殿が現れる。
そこでは今にも雨が落ちてきそうな空模様の下に悲しげなギターの音色が大理石に響いていた。それは「禁じられた遊び」だったと思う。いや「アルハンブラの思い出」かもしれない。

僕はその音色に引き寄せられ、やがて釘づけになる。同世代と思われる男性がギターを奏でる。その音色は素晴らしい。さらにここでの演奏は切なさを増幅させる。周囲には大道芸人、土産を売る人、通り過ぎる人々・・・、そしてその調べに感激して立ちすくむ東洋人。もし彼が日本に来てたらクロード・チアリぐらい有名になっただろうか・・などと思いながら。もしかしたら有名な方かも知れないのだが。そこで5曲の演奏を聴いた。その間、ドゥオモで別れた仲間が通りすぎて行った。そのシチュレーションは震災直後、上野駅中央口前で「がんばれ福島」の募金活動をしていた物真似タレント一行の一人一人に、泣きながら握手している酔っぱらいおじさんを彷彿させた。

彼は3種類のオリジナルCDを売っていた。1CD*15ユーロ、2CD*+20ユーロ、3CD*30ユーロ。僕は迷わず15ユーロを出し、彼に「ファッツ アー ユウ リコメィンド?」と聞く。何故か僕の英語は英語圏では通じないが、他のところでは通じる。彼は1枚差出す。「メルシィー」と言いCDを受け取る。

僕は「メルシィー」ではなく「グラッツェ」だったと後悔しながらそこを離れ、アルノ川に出る。ヴェッキオ橋を横目にサンタ・クロチェ教会に向かう。途中、子供たちが歌いながら歩く一行に出合い動画を取り、アルノ川に写る街並みに心を奪われた。そんな事をしてたら、教会に着いた時にはすでに入口の扉が閉まっていた。

雨が降り出した。意気消沈し、真っ赤な折りたたみ傘をさし別の通りから再びシニョーリア広場に行くと、クロード・チアリばりの彼はすでに演奏をやめ、片付けが終わった直後だった。
僕はバックからさっき購入したCDとペンを取りだし「プリーズ クド ユー サイン」と、そして彼は笑顔で「OK」と言った。僕は今度は「グラッツェ」と言う。雨が本降りとなり、人々は足早に通り過ぎて行く。広場はギターの音色に変わり、雨音と足音が大理石に響いていた。

それが
Tadeusz MACHALSKI   Guitar Collection
旅の2枚目CDです。
 
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