CD騒動

 スカーフは不評だが、CDは評判が良い。

 それも、すこぶる。しかしそれを聞いて購入したわけではない。
 そのCDをネットで検索しても日本語では出てこないので、まだ日本では発売されていないと思う。

 音楽を思い出になどと思い、旅先でCDを買うことにしている。この旅でも2枚購入した。
「欧州では音楽のネット購入が主流となり、CD専門店がほとんどなくなった」との話を聞く。そのこともありホテル近くの大型スーパーで音楽を探す。女性に人気の国なので、なんとなく女性の曲を目指した。CDの事前情報はなく、説明文章も分らない、どうも視聴もできそうもない。そこで最初に目についたCD1枚を選んだ。その選定には1分も掛からなかった。
 しかしその後大変なことになった・・・。

 大型スーパーでCDと食材等をカゴに入れた。時間は21:00近いが外はまだ明るい。「この時間を夕方と言えば良いのだろうか?」などと思いながらレジに並ぶ。レジはベルトコンベアー型。自分の番に近づくとカゴからベルトコンベアーに乗せ換える。各自購入予定品物の間にレジの人が仕切りを置く。空港の手荷物検査のようだ。旅人の僕は購入予定物が他の人より当然少ない。

 自分の番が来た。いつもなら、金額を確かめ、少し多めにお金を出し、お釣りとレシートをもらい、僕は「メルシィー」と笑顔で答え、一件落着だ。しかしその時はそうはならなかった。

 レジは知的な感じの少し年下と思われる女性だ。僕は見た目の女性年齢はまったく分らないのだが。
 計算が終わり合計が表示され、財布からお金を取り出そうとすると・・・。彼女がCDを手に、何やら話しかけてきた。「えっ!何!」突然のことで動揺する。「う~ん・・・・・分らない」。もとっも英語だって良く分からないのに、分かるはずもない。彼女はややオーバーアクションになり、心なしか声も大きくなてきた。それでも分らない。CDのレジはここじゃ無かったのだろうか?何か怒ってる?まさか歳の事ではないだろうなどと思った。気が付くと彼女の同僚2人も参加。「困ったな~」などと日本語で言い、僕はパニック状態に陥る。レジには10人以上が並ぶ・・・。さらに無線機を持った黒メガネの女性まで登場する。僕は汗だくになる。「冷静になるんだ」と自分に言い聞かせ、上着を脱ぎ、汗をハンカチでぬぐった。
 10人を超える観客の元、5人による懸命の意思疎通努力が実り、やっと僕は理解した。後に並ぶ観客の人々もようやく一安心だ。
その事件の顛末はこういうことだった。
彼女が伝えたかったのは、「CDの会計をレジで済ませた後、向こうのカウンターにレシートとCDを持て行くと1ユーロ返金される」という事だった。
何故そんなシステムかは、いまだに不明。たしかCDは16ユーロだったと思う。

 何もなかったようにベルトコンベアーの終点付近で食品等を袋に入れる。レジ付近は少し混雑はしているが、いつもの静けさを取り戻す。無線機を持った黒メガネの女性が少し離れたカウンターまで護送、いや、連れていてくれ、僕は1ユーロコインを手に「メルシィー」と言う。

 この騒ぎの最中は1ユーロどころではなかったが、彼女たちの親切に嬉しくなった。帰り際レジの前を通り、僕にとっては最大限のオーバーアクションで、彼女達に「メルシィー!」と感謝を伝えた。笑顔の返答がまぶしかった。外に出ると真っ赤な夕焼けが広がっていた。

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 そんな思い出深いCDとなりました。近くに来た際は聴きに寄って下さい。

 そのCDは、 LOUANE の CHAMBRE12  です。