20世紀末に「いわきの家」設計コンペが行われていた。それはいわき市内で住宅建築を計画しているオーナーを公募し、その敷地条件と、住宅に対するオーナーの意見・希望・夢をまとめた設計案を募集するものだった。いわき市・地域振興整備公団常磐支部・いわきまちづくり推進委員会(市内各建築団体が中心)が主催で、たしか7回(7年)行われたはずだ。いわき市の様々な建主と敷地から「いわきの家」とは何かを問う試みはとても興味深かい。建主にとっては志ある建築家が真剣に考えた200以上の計画を目にし、そこから住まい建築を始めれる。設計者にとっては1等(大賞)になると作品が実際に建築されるところが大きな魅力だった。
夏にオーナーを募集し、12月からコンペ参加者応募登録、そして敷地見学会と公開ヒヤリングが行われ、オーナーの希望や住宅への思いを直接聞く機会が設けられた。作品提出は2月、直後に一次審査が行われ1/5程度の作品に絞られ、3月始めに一次審査通過作品による公開審査会が行われた。その場で一次審査通過者・団体は3分間の設計説明を行う。(初参加時は一次通過50作品で150分の時間を要した)。その後に審査員8人とオーナーが応募設計者を前に審査し、大賞他を決める・・という流れで、とても丁寧な運営の設計コンペという印象を持った。
初参加時は応募登録者443、作品提出262で全国からの応募だった。その内で福島県内からは13作品で全体の5%程度、地方開催設計コンペだが全国大会の様相を帯びファイトが沸いた。参加設計者には著名建築家や、東京大学や東北大等講師や研究室での参加もあり、ライバルに不足はないどころか、ハイレベルの設計コンペだった。しかし必ずしも審査員とは意見や好みの一致を見いだすことは出来ず、3回参加して3回入賞で大賞には手が届かなかった。そんな中、入賞で終わったコンペのオーナーから「我ら夫婦は野武士建築家案の家が良いなーと思いました」との内容の手紙を受け取り苦労が報われた感じがし、その手紙は宝物になった。
設計者の立場から言えば、同じ施主・敷地条件で検討した他の建築家が導き出した261通りの答えを目に出来、「こんな考え方もあるのか」などとても興味深い経験となる。さらに3回も参加するとその間に親しくなった方や、その後建築家協会等で再会したり、別な設計コンペで出会ったりし、他の建築家との繋がりも生まれた。
・・・以下次回に続く・・・
