建築道(みち)42・・アウトビアンキ・アバルトと宴

 自宅雑誌併催写真に当時主にツレが乗っていた車アウトビアンキアバルトが写っている。大好きだったが写真が残ってなく、家族にとって貴重な思い出の1枚だ。その車はJC(青年会議所)の先輩から購入。思えばアバルト購入の切っ掛けはとある宴会だった。

 車好きたちが「アバルトはサソリマークのツインカム。ただのアウトビアンキじゃない」「可愛くてシルバーと黒がかっこいい!よなー」「イタリア車は雨が漏るんだ。イタリアは雨が少ないから、、、ぎゃははー!」「あのアバルトは絶対に買いだよ」「おまけに左ハンドルだし」などと話が盛り上がる。その頃の彼はイタリアへ研修旅行に行ったばかりで興奮が冷めやらぬイタリアかぶれ。近くで聞いているうちに、ついその話に乗ってしまう。「そんなに貴重な車なの?」。イタリア車と言うことだけで惹かれてしまい、デザインの国イタリアのサソリ、アバルトを見てみたくなった。

 次の日、さっそく噂の雨漏りするかもしれないアバルトを会いに行き、乗ってみて一目ぼれ、購入することにした。アバルトは雨漏れしなかったし、噂通りの素敵な車だった。しかし時々トラブル(故障)が起きた。当時から外国車は部品手配に難があり、修理にお金と時間がかかる車だった。面倒だけど、そこがまた愛おしく、「イタリア車だからしょうがない」と思ってしまう。しかし5年ほど乗ったある日、走行中に何の前触れもなく全電流遮断しエンジン急停止した。そしてしばらくすると電源が復帰、エンジンがかかった。電源系統に負荷がかかるのだと思ったが、修理工場に持って行くと通常電源となり問題なくなる。それはとても危険であり、ウンともツンとも動かなくなるので後続の車に迷惑がかかる。「国道13号線で止まった時は高校生が押してくれて、嬉しかったぁ」とツレは言う。しかしその後3度同じ状況となり、そのたびに知り合い修理工場では故障原因が特定できなかった。通常使用の身では手に負えず、泣く泣く手放すことにした。そして車をこよなく愛し同じ車種のアウトビアンキを1台持っている知人に譲った。そのアバルトはレースで活躍したほど通好みの車となった。いろいろ苦労した分、愛着があり少しだけ後悔の念があったが…国道を走っていていきなり急停車のストレスには耐えられなかった。その後も彼は今でも欧州車に乗っている。厄介だけど愛着が沸く車を、それはあのアバルトがあったからだろう。

アウトビアンキアバルト

 最近、彼の経験史上最高額修理費をイギリス車にかかったという出来事があった。外観は全く変わらずの修理だ。買い直した方が・・と心が揺れたが愛着があり修理の道を選んでしまった。外国車の修理にお金がかかるのは昔も今も同じだ。買うのは安いが修理が高い。もはや道楽の域で、アバルトを聞いたあの宴の酔いがまだ抜けてないのだ。

 そんな愛着を持てる建築を造りたいものだ。